関節外科スポーツクリニックの記事が2021年7月3日の河北新報に掲載されました。(河北新報より許可を得て転載)

河北新報掲載記事

[掲載内容]

四十肩・五十肩、腱板断裂
肩の痛みの原因はさまざま

我慢や放置せず早期に受診を

 

痛みの原因はさまざま
加齢に伴い進行することも

四十代以後になって感じる肩の痛みは、四十肩、五十肩とひとくくりにされがちですが、肩の痛みにはさまざまな原因があります。関節の中の関節包という柔らかい組織が傷んで硬くなってしまう状態を「肩関節周囲炎」または「凍結肩」と呼んでおり、これがいわゆる四十肩、五十肩です。

一方、60代以降の方で多いのが「腱板断裂」です。肩関節は、ボールのような形の上腕骨頭と受け皿のような形の肩甲骨関節窩の組み合わせで動く仕組みですが、受け皿側が比較的小さくなっています。そのため広い範囲で動かすことができる反面、不安定で脱臼しやすい関節です。しかしそう簡単に脱臼しないのは、肩関節の周りが腱板という筋肉で覆われ肩を安定させているからです。腱板が加齢や使い過ぎで傷んでしまうのが腱板断裂で、これを放置しておくと軟骨部分がすり減って変形を来す「変形性肩関節症」という状態になることもあります。

早期の治療開始が重要
まず保存療法からスタート

「痛くて夜眠れない」「朝起きた時から痛い」「じっとしていても痛い」のように、常に痛みを意識する状態で腕や肩の置きどころを探すような状態であれば、できるだけ早く受診して治療を始めてください。診察では、まず症状を聞いて傷んでいるのが腱板なのか、関節包なのか、軟骨なのか確認し、それに応じてレントゲンやCT、超音波、МRI検査を行います。

治療には保存療法と手術療法があります。保存療法では患部の炎症を抑える薬を注射する方法が代表的です。また腱板断裂の場合は、肩甲骨周りの筋肉をほぐして正しく使えるようにする運動も行います。ただ程度があまりにひどい場合はこれらの方法で改善しないこともあり、保存療法を3〜6カ月行っても回復傾向がみられない場合は手術が選択肢となります。手術は腱板断裂も凍結肩も内視鏡を使った手術が一般的です。切れた腱板を内視鏡を使いながら骨に縫い合わせる手術や、硬くなった組織を取り除いてきれいにする手術を行います。内視鏡手術は傷口が小さく比較的短時間で終了します。また、筋肉を切開する侵襲も小さいことから体への負担が少ないというのが患者さんにとってはメリットです。

関節の仕組みに逆転の発想
リバース型人工肩関節

内視鏡手術では改善できないほど腱板断裂が進み、軟骨部分が傷んでしまった方には、人工関節に置き換える「人工肩関節置換術」を検討します。従来の手術は、肩関節と同じ形状をしたデザインの人工関節を入れるものでしたが、近年は2014年に日本に導入された「リバース型人工肩関節置換術」の適用が増えています。従来型との大きな違いはボールと受け皿の位置が逆になることです。ボールに対して受け皿が大きくなることで、より安定した動きが可能となり、腱板が断裂している方であっても腕を上げるなどの動作が可能となります。

リバース型は原則65歳以上であること、腱板断裂や軟骨の変形がみられるなど適用条件があります。医師の正しい診断のもと、ご自身にあった治療を進めるようにしましょう。また手術を行う医師は資格が必要のため手術を受けられる施設には限りがあります。さらに手術には主な合併症として、感染、人工関節の脱臼、経年的な使用による人工関節の緩みなどリスクがあることを理解しておくことも大切です。術後、約2週間は装具を着けていただき、リハビリは手術の翌日から開始します。早い時期からリハビリを始めることで、術前の筋力を維持することができ、肩の機能を高めることができます。退院後は、日常生活や軽いスポーツ程度はほぼ問題なく行えるようになりますが、術前に動かしていなかった筋肉を急に激しく使うのは避け、ゆっくり時間をかけてできることを広げていきます。また、いつまでも健康な肩を維持するために、定期検診を欠かさず受けるようにしましょう。

[メッセージ]
「四十肩、五十肩は時間が経てば治る」と聞いたことのある方も多いかもしれません。しかし、肩の痛みの原因はさまざまあり、調べてみたら腱板断裂で症状が進行していたというケースもあります。早めに原因を特定することで受けられる治療の幅も広がります。肩の痛みを意識する生活が続いている場合は、早い段階で整形外科を受診されることをお勧めします。